ものもち

持ち物は、決して多くないし、
「もし、どろぼうが入ったとして、
取られて困るような高価な品物はあるかなぁ」
と考えたら、即座に「ない!」と
言い切れるほどまったく高価なものはなく、
「もし突然死んで、遺品を整理してもらうときは」
と考えたら、他人様にさしあげるようなものはまったくなく、
ゴミの日に出すのも恥ずかしいかというようなものばかり。

これは、そんな私の数少ない持ち物のひとつ、
小さなヘアピンです。
私がまだ小学生のころ住んでいた
阪急電車の逆瀬川という駅の近くに、
逆瀬川市場という名の小さな市場がありました。
貸本屋さん、お米屋さん、陶器屋さん、
豆腐屋さん、和菓子屋さん、薬局、
お肉屋さん、麺屋(食堂でなく、麺類を売っていました)
八百屋さんなどが入っていました。
そうそう余談ですが、あの当時、駅の傍の林の中に、
れんが造りの焼き場(仮葬場)もありましたよ。
あれは夢だったのかと思うような不思議な光景。

その市場に化粧品屋さんもあって、
そこに女の子が好きそうな
かわいい小物なんかも売っていて、
お友達へのプレゼントなどを買っていました。
たしか「ひつじや」さんという名前のお店でしたが、
母と出かけた時に、一目見て気に入って、
おねだりして買ってもらったのがこのヘアピン。
こんなしわくちゃでカサカサな手のオバアサンが、
持っているものにしてはかわいすぎますね。
もう、50年のおつきあいです。
こんなに小さいのに、
よくまぁ無くならずに残っていたものです。
いつまで一緒にいられるかしらね。